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| Q1 加圧筋力トレーニングって、いったいどんなものですか? |
“加圧筋力トレーニング”と呼ばれる画期的なトレーニング方法が、雑誌やテレビなど様々なメディアで取り上げられています。筋力トレーニングはほとんどの方がご存知だと思いますが、加圧筋力トレーニングとは、加圧して行う筋力トレーニングのことです。
それでは、「加圧」とは何でしょう?この言葉は呼んで字のごとく、「圧を加える」ことです。それでは、何に対して、どのように圧を加えるのでしょうか?
圧を加える対象は、腕と脚です。腕と脚のつけ根を、専用の加圧ベルトを用い、個人個人に合った適切な圧を加えた状態でトレーニングします。
この加圧筋力トレーニングの最大の特徴は、きわめて軽い負荷で信じられないほど大きな効果(筋肉の肥大と筋力アップ)が得られること。
そのため、高いレベルでの筋力アップを望むスポーツ選手はもちろん、中高年の方の健康増進にも、無理なく最大限の効果を発揮します。
さらには、医療現場でのリハビリの手段としても注目を浴びています。
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石井直方先生プロフィール
石井 直方
(いしい なおかた)
昭和30年東京都生まれ。ボディビル1981・1983年ミスター日本優勝、1982年IFBBミスターアジア優勝。東京大学大学院総合文化研究科教授(広域科学専攻・生命環境科学系)。専門は筋生理学。 |
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| Q2 加圧筋力トレーニングは、痛みやきつさを伴いますか? |
専用の加圧ベルトで腕や脚のつけ根に適切に締めつける…。このトレーニングを本気でやれば結構苦しくなりますが、それは加圧した箇所が痛いからではありません。加圧ベルトは、締めつけても筋肉に食い込まないようになっています。では、なぜ苦しいのでしょう?
実は、ベルトで締めつけた箇所より先の部分に、血液の流れが少ない状態を一時的につくるためです。ここで、“適度に”血流を制限することがポイントです。
さて、加圧した状態では負荷は軽くても、筋肉の中でたくさんの筋線維(筋肉を構成している1本1本の細胞)がつかわれています。これは、きついトレーニングをしているときと同じように「頑張らざるをえない」状況に筋肉が追い込まれてしまうためです。
ですから苦しくは感じますが、体へかかる負担を考えると、通常のトレーニングよりも小さい負担でそれ以上の効果を得られるのです。ですから、まったくトレーニング経験のない方や、高齢の方でも気軽に安心して加圧に取り組むことができます。
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| Q3 加圧筋力トレーニングはどんな人に向いているのでしょう? |
近年、加圧はスポーツの現場、リハビリの現場、治療・医療の現場へと急速に浸透しつつあります。
そこでは、一般のスポーツ愛好家をはじめ、野球、サッカー、ゴルフ、バレーボール、競輪、レスリング、トライアスロン、ボディビル…など様々なスポーツの一流選手たちが有効利用し、また、運動経験の少ない中高齢者の筋肉にもしっかりと変化が現れています。
脳血管障害の後遺症で苦しんでいる患者さんや、様々なケガや障害のリハビリにも絶大な効果を発揮し、医学の常識をくつがえす症例が次々と出ています。他の先進国に先駆けて超高齢化社会に突入する日本では、今後ますます注目されるトレーニングだと言えるでしょう。
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| Q4 脳梗塞などの後遺症にとてもいいと聞いたのですが… |
加圧は治療・医療の現場で革命を起こしつつあります。内科的な面では、脳血管障害(脳出血、脳梗塞など)の後遺症への症例が数多くあります。
脳出血や脳梗塞などでマヒが残った患者さんに対して、従来病院で行われていたリハビリは、筋肉や関節の拘縮(曲がって固まってしまう)を予防するものがほとんどでした。
しかし医療機関にて行われている加圧リハビリでは、従来の常識では想像もつかない成果を上げているのです。
たとえば、脳梗塞をわずらって1年間寝たきりにたっていた患者さんが、加圧リハビリを行ったところ、下の写真(らせんCT画像)のように3ヶ月で大腿部の筋肉が57%も増えました。この患者さんは加圧リハビリ開始後、1ヶ月で歩行が可能になりました。
また加圧の前後の様子を比べてみると、左下の写真のように2本しか映っていなかった血管が右下の写真のように何本も増えています。これは、加圧をすることで、これまで機能していなかった静脈に血液が流れ出したからだと考えられています。
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| Q5 運動中にひどい捻挫をしました。加圧は効きますか? |
加圧は捻挫やその他いろいろな整形外科的疾患について、その治療やリハビリに着実に効果を上げています。
捻挫や靱帯損傷などによりギブス固定が必要な患者さんの場合でも、筋肉が衰えることなく、早い時期に回復することができます。
また、難病である大腿骨骨頭壊死の患者さんも写真1の通り、6ヶ月後(右)には大腿骨頭が鮮明に映るぐらいまでになりました。血流がよくなって状態が改善しているのです。
複雑骨折で3度も手術をして骨の萎縮が強かった患者さんも、加圧治療後に骨萎縮が改善しています(写真2右)。関節面の変形も進まなくなりました。
以上のような症例の他にも、スポーツ選手が手術前に筋肉が細くならないように「手術前のリハビリ」に導入したりと、適用範囲は広がる一方です。スポーツで靱帯を切ってしまったり、骨折をしてしまったとしても、加圧によるリハビリが早期回復をお手伝いします。
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| Q6 加圧すると、体にどんな変化が起こるのですか? |
加圧筋力トレーニングの効果ですが、一つの実験例を挙げます。平均年齢60歳の女性20名が、4ヶ月間、加圧筋力トレーニングを行った場合です。
被験者は、上腕のつけ根、つまり脇の下より少しの部分に弾性のある専用の加圧ベルトを巻き、腕の曲げ伸ばし運動であるダンベルカールを15回×3セット行いました(個々で圧は違いますが、平均の圧が110mmHg。週2回)。
ダンベルの重さは、被験者の最大筋力の30〜50%と非常に軽く、トレーニングの常識で考えると、通常ではとても筋肉が太くなるような負荷ではありません。
写真は最も筋肉が肥大した人のもので、加圧の前後で、上腕二頭筋が焼く30%肥大し、ダンベルカールでは直接トレーニングの対象とならないはずの上腕三頭筋も焼く20%肥大しているのがわかります。
20人の平均値を模式化してみました(図)。トレーニング前の図Aに比べて、加圧筋力トレーニング後には上腕二頭筋で20%、上腕三頭筋で13%の肥大が起こっています(図B)。
通常の筋力トレーニングではどうでしょうか?
最大筋力の80%の重さを使った高強度のトレーニングをした場合は、Aに比べてそれぞれ15%、5%の肥大が見られますが(図C)、加圧筋力トレーニングと同じ強度で加圧をしない場合では、Aに比べて5%、0%の肥大(図D)という結果でした。
これはどういうことかというと、低強度の通常のトレーニングのみの場合はほとんど効果がなく、図Bの効果は加圧をしたことによって現れたと考えることができるのです。
また、太さだけではなく実際の筋力も平均で20%ほど上昇し、同時に筋持久力も増えることがわかっています。筋力と筋持久力が同時に増えるような一挙両得のトレーニングはなかなかありません。トレーニングの原則を破る夢のトレーニングと言えます。
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| Q7 体の中では何が起こっているの? |
血流の変化に注目
なぜ加圧を行うとそれほどまでに効果があるのでしょう?ここで重要なのが、加圧筋力トレーニングを行っている時に、筋肉の中の血流がどうなっているかです。
研究が行われた結果、図のようなモデルが考えられています。抹消抵抗というのは、血流がいかに流れにくいかという指標ですが、加圧前の値を1.0とすると、良好な加圧をかけてるときは1.7ぐらいになり、つまり1.7倍流れにくくなります。
次にベルトをゆるめて圧を取り除く(除圧する)と、加圧をする前にくらべて、抹消抵抗の値が0.6まで下がり、血液は流れやすくなります。
この加圧と除圧の相乗効果で驚くべき変化が体に現れます。血液循環の変化自体は、通常の筋力トレーニング中にも起こりますが、加圧は、筋肉が縮むときに血液がしぼりだされ、緩むときにより多くの血液が流れ込むその過程を、特に強調したものだと言えます。
成長ホルモンの効果
血流の次に筋線維の状態を見てみると、加圧をかけてトレーニングをしたときには、負荷は軽くてもたくさんの筋線維が使われます。普通のトレーニングをしているとき、筋肉を目一杯使っているつもりでも、実はかなり余力を残しているのですが、これは、イザというときの“火事場の馬鹿力”のために、体が無意識に制御をかけているから。加圧するといい意味で筋肉がだまされて、いつもより活発に働いてしまうのです。
さらに、加圧筋力トレーニングでは内分泌系の活性が上がります。まず、疲労物質と呼ばれる血液中の乳酸の濃度がいちじるしく上がり、少し遅れて成長ホルモンは運動前の平均値から100倍以上増加するのです。
志望を落とし、筋力を引き締め、全身的に若返る効果があるという成長ホルモンですが、それが筋肉に作用し、太くしていくのだと考えられています。
そのほかにも、(1)神経の終末からいろいろな物質がでて筋肉を刺激する効果、(2)筋肉が分泌して筋肉自身に影響を与える成長効果、(3)一酸化窒素という物質が適度に増える効果、などが考えられています。
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| Q8 血流を制限してしまうと、血栓が起きる危険性はありませんか? |
加圧筋力トレーニングは正しく行われれば間違いなく効果的ですが、「正しく」行われなければ、危険を伴うことになります。
このトレーニング法をつくりあげた佐藤義昭氏自身、ノウハウを確立するまでの過程でずいぶん失敗してきました。
一番のポイントとなるのが、「適度に血流を制限する」ことです。しかし、これが難しい。というのは、個人個人で、年齢、腕や脚の太さ、脂肪のつき具合、血管の太さ、筋力や体力にいたるまで全く違うため、適切な圧の強さもそれぞれのケースで異なってくるのです。
適度な圧をかけるからこそ効果がでる、そして適度な圧は個人個人で異なる、自己流では危険だということをしっかり覚えておいてください。
それでは誰が適度な圧を決めることができるのかということですが、そこで加圧のノウハウを知り尽くした指導者の出番となります。
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